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在ケニア日本国大使館は、エリトリアセーシェルソマリアを兼轄しています。

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成長:将来の開発実施者と共に

生徒の質問を受けているところ

ボランティア氏名:宮川佳子(みやがわ よしこ)
隊次:平成21年度3次隊
職種:村落開発普及員
任地:イースタン州マチャコス県マチャコス
配属先:マチャコス技術専門学校
出身県:神奈川県
首都ナイロビから南東は80キロほどの、私の任地マチャコス。半乾燥地帯で、ナイロビからの帰り道、サバンナを通り抜けていくと、自分がアフリカに居るのだと感じます。私は、配属先であるマチャコス技術専門学校(以下MTTI)の人文学部に所属し、ソーシャル・ワークとコミュニティ開発(以下SWCD)専攻の生徒を対象に講師として活動しています。ケニアにおいて学士号の次によいとされるディプロマ号を取得するべく学んでいる学生は、いわばケニアのエリート予備軍。学歴が大きく左右するケニアでは、学位を取ることが非常に重要で、その後の就職にも大きく響きます。そのMTTIで、私はコミュニティ開発序論、キャパシティ・ビルディングとエンパワメント論、プロジェクト・マネジメント論を担当しています。要請としては理論と実践を結びつける講義・演習の提供となっています。実際の授業では事例を多く取り込みながら、生徒との対話、ディスカッション、ワークショップを盛り込んで講義をしています。休暇期間は文献・事例のリサーチと指導教本の作成をしています。
 
ケニアでは、記憶型教育が主流です。それは初等教育から高等教育まで、毎年進級を決める国家試験があることが起因しています。SWCDは「人々の暮らし」を改善するための学問ですが、この分野でも記憶型の教育が主流となっています。コミュニティ開発においては民族性、地域性、コミュニティの人々、人々が置かれている状況、直面している最優先事項の問題など様々な要素があり、その要素を分析・理解した上で十人十色のアプローチをするものであると認識しています。しかしながら、記憶するということが最優先事項になっている現状で、実践的な講義の提供というのは非常に難しいものがあります。
例えば、講義内で事例を元に議論をさせると、ほとんどの生徒が記憶した定義を盛り込んだ模範的な解答をします。少し変化球のような質問を投げかけて、「それはわかりません」「この通りにしていればいいのに出来ないのは、コミュニティの人たちが怠惰だから、無知だからだ」と返答されたときには唖然としてしまいました。
“Remembering is not equal to understanding”
(記憶するということと、理解するということは同じではない)

コミュニティ開発序論の講義風景

生徒には、よくこの言葉を投げかけます。 試験に合格するのは重要なことです。しかし、事例や実習を通して「なぜそうなるのか」「どうしたらよかったのか」「今後どうすればよいのか」と、自分自身に問いつづけることにより、そのケースにあった対応を考えることができるのではないかと伝えています。論理的思考力・分析力を養うために議論や対話を通して、「住民と一緒に」動くという重要性を認識することのできる「気づき」のある講義を心がけることで、柔軟性に富んだ人材になってもらえるよう、国家試験対策とのバランスを取りながら活動しています。
 
教育セクターでは、活動の結果はとても見えづらいものです。私の場合は学校内のテストと国家試験の結果、意見発表会などを通してでしか評価をすることができないため、私自身も「本当にこれで正しいのか、彼らにとってふさわしいやり方なのか」と問いかけながら準備、講義をしています。毎日が試行錯誤の連続で、骨が折れる作業も多々ありますが、私自身が学生たちと共に成長できるチャンスをもらえたのではないかなと思っています。生徒たちや同僚からも多くのことを学びました。将来、彼らが開発実施者になり、問題に直面した時に『「そのとき、どう動く?どう考える?」と、ヨシコ先生が言っていたな…』と少しでも思い出してくれたら、考えるきっかけになってくれたら、という願いを込めて、チョークとノートを片手に、今日も講義に向かいます。

ディスカッション中の生徒たち

※本記事の内容は宮川氏の個人的な見解であり、日本国外務省及び国際協力機構(JICA)の見解を反映しているものではありません。