大使ご挨拶

ムサリア・ムダバディ閣下、ワイパー民主党のカロンゾ・ムショカ党首、上院議員、下院議員、次官、大使、閣下、ご来賓の皆様、
本日は、お忙しい中、また直前の時間変更にもかかわらず、このように多くの方々にお集まりいただき、誠にありがとうございます。 このように多くの方々にお集まりいただき、大変感謝しております。特に、ムダバディ閣下の御臨席を賜り、大変光栄に存じます。
今月23日、徳仁天皇陛下が65回目の御誕生日を迎えられました。 皆様とともに、この御誕生日をお祝いできますことを、大変嬉しく思います。 古の国日本において御在位7年目を迎えられ、陛下は円熟の境地にあられます。
閣下、
私見ではありますが、陛下はケニアに特別な思い入れをお持ちです。以下の3つの事実は、それを明らかに示すと思われます。第一に、2010年、皇太子であられた当時、陛下は初めてのサブサハラ・アフリカ諸国訪問先としてケニアを選ばれました。第二に、陛下は私に、昨年2月のルト大統領の訪日時に大統領にお会いできて嬉しく思っているというメッセージをルト大統領に伝えるようおっしゃいました。3つ目、そして非常に重要なことですが、ルト大統領の来日中に、大統領を主賓として催された午餐会で、陛下の御愛娘である愛子内親王がスワヒリ語で大統領に挨拶をされました。 ケニアへの深い親愛の情は、天皇陛下だけのものではなく、広く、そして深く、日本国民に共有されています。
閣下、
ケニアと日本は、切っても切れない、志を同じくするパートナーです。昨年12月5日、私はナイロビ大学で、ケニア外交の60年の歩みに関する閣下のご講演を拝聴しました。その中で大統領は、ケニア外交の3つの主要原則、すなわち自由主義、多国間主義、そして汎アフリカ主義を強調されました。自由主義に関しては、ケニアと日本は、自由で開かれたインド太平洋を含む、ルールに基づく国際秩序に強くコミットしています。多国間主義に関しては、ケニアと日本はWTOとその自由貿易の原則を堅く支持し、国連安全保障理事会の改革を積極的に推進しています。 汎アフリカ主義に関しては、日本は、1993年の第1回TICADを嚆矢とする、アフリカ大陸全体が参加する経済会議を創設した国であり、ケニアは2016年にアフリカ諸国として初めて、このナイロビでTICAD首脳会議を開催しました。同じ観点から、日本はケニアが東アフリカの平和を促進する上で果たしている役割に最大限の敬意を表します。自由主義、多国間主義、そして汎アフリカ主義。これらは、我々のパートナーシップの基盤であり、今後もそうあり続けるでしょう。
閣下、
まさにその基盤の上に、この2年間で両国は関係を劇的に強化し、両首脳の相互訪問や大統領の訪日を通じて、貿易、投資、防衛、保健、ICTなど、さまざまな分野での協力が大きく前進しました。今年は、6月の大阪万博でのケニアのナショナルデーと8月のTICAD9が、さらなる大きな後押しとなるでしょう。
閣下、
投資分野における協力は、最も目覚ましいものです。ケニアに進出している日本企業は、現在120社を超えています。2011年以降、その数は右肩上がりの増加傾向にあり、4倍に増えています。これらはすべて、ケニアの経済成長と雇用創出に貢献しています。モンバサ港の近代化やドンゴ・クンドゥ経済特区の建設は、ケニアとともに歩むという日本の決意の表れです。
閣下、
私たちは、熱意ある日本企業が次々とケニアに進出することを歓迎し続けています。私はそれらの企業を「光り輝く隠れた宝石」と呼んでいます。なぜなら、それらの企業は、まだ規模は小さく、目立たない形で地域経済や国家経済に貢献していますが、その専門性において素晴らしい輝きを放っているからです。今日は、そのうちのいくつかをご紹介したいと思います。エバラポンプは水ポンプの専門メーカーです。ケニアの水問題は非常に大きな課題であり、エバラの貢献の可能性も非常に大きいといえます。CCイノベーションは北國銀行の一部門で、投資家へのコンサルティングや融資を行っています。現在、ケニアに上陸している唯一の邦銀です。日立チャネルソリューションズは銀行ネットワークにATMを提供しています。ケニアではM-PESAの時代となりましたが、ATMは今もケニア市民の日常生活に欠かせないインフラです。 ケニアで生理用品を販売するユニチャームは、女性のエンパワーメントに一層貢献するため、先月、エジプトからケニアに生産拠点を移しました。4社は、庭に展示ブースを設けています。是非、4社の提供するものをご自身の目で見て、触って、感じて、ケニア経済への貢献を実感してください。しかし、この4社はほんの一例です。ケニア経済全体では、多くの宝石が日々ひっそりと輝いています。
閣下、
ケニアの研究開発は、ケニア医療研究機関(KEMRI)の医療研究、オルカリアの地熱発電、ケニアの新興企業による数々のデジタルイノベーションに代表されるように、世界的な競争の舞台にまで上り詰めています。ケニアは誇りを持つべきであり、日本はケニアが世界的な卓越性を獲得する旅路を今後も支援し続けていく所存です。
閣下、
先月、日本政府は日本と国連ナイロビ事務局(UNON)の関係を格上げするためナイロビに国際機関日本政府代表部を開設しました。これは、国連環境計画(UNEP)や国連人間居住計画(UN-Habitat)をはじめとするUNONに拠点を置く国連機関に対する日本の重視の強化、UNONが国連本部として果たす役割の拡大、そしてナイロビにある国連機関の地域事務所や国別事務所との日本の交流の活発化を反映するものです。 しかし、それと同時に、ケニアが多角的主義の原則にどれほど献身しているか、そしてケニアがナイロビにUNONを置いていることをどれほど大切にしているかに対する日本の評価の反映でもあります。私たちは高い敬意を表します。
閣下、
私はいつも申し上げているのですが、日本とケニアの人々はどちらも楽観的で、進取の気性を持ち、伝統を尊重し、勤勉であり、そして自らを恃む精神を持っています。共に考え、共に話し合い、共に活動することで、私たちは互いに学び、互いに鼓舞し合うことができます。だからこそ、ケニアと日本の友好関係は長いのです。過去から長く続き、未来にも長く続いていくでしょう。そして現在においても、互いに対する温かい親密な感情と深い尊敬の念は、私たちの心に長く留まるのです。
閣下、
これこそが両国関係の基盤です。非常に強固な基盤です。天皇陛下は65歳になられ、閣下は64歳になられ、ケニアは61歳になり、私は2か月後に61歳になります。私たちは皆、共に歩んでいます。本日の料理は、私の料理人である境雄二郎と、調理助手のパスカルが用意し、大使館のスタッフが会場を準備しました。日本料理と日本酒は、ともにユネスコの世界無形遺産に登録されています。本日は、それらをお楽しみいただければ幸いです。両国国歌演奏の録音は、クラシック音楽のプロの作曲家である私の妻、由香が自ら編曲したものです。これらは、私たちが、閣下と皆様を歓迎し、最高の歓びを分かち合いたいというささやかな気持ちから用意したものです。
ありがとうございます。そして、アサンテニサーナ。
2025年2月27日
特命全権大使
松浦 博司