平成27年(2015年)3月16日
- (PSCU作成。仮訳。原文はこちらを参照)(PDF)
(111KB)
(記者)
今次訪日の主な目的はどういったところにありましたか。
(ケニヤッタ大統領)
今回の訪日には三つの目的があったと考えています。まず一点目としては、第3回国連防災世界会議に出席し、気候変動等が主たる原因となって発生している災害の影響を軽減するため世界中の国々とどういった協力ができるか検討することです。
ケニアは、旱魃や洪水の被害を頻繁に受けており、現在我々はこれらの災害により適切に対処するためどのようなメカニズムを取り入れるべきか議論を進めています。この関連で、日本政府はケニアを含む多くの国々と協力することを明らかにしました。周知の事実ではありますが、日本は災害に対して数多くの防災・減災手段を採用しています。また、日本はこれまで多くの自然災害に見舞われており、それらに対処するための適切なメカニズムを持っています。我々は、防災・減災に関するメカニズムをケニアで確立するに当たり、日本の経験から学ぶべく、日・ケニアでどういった協力が可能か模索していきたいと考えています。
二国間関係の文脈では、非常に有意義な意見交換を実施しました。ご承知のとおり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの制度構築のため日本は3,800万ドル(当館注:3月16日の国連大学での安倍総理のスピーチでは約3,300万ドルと発言)の支援を約束しました。我々は、このような協力を大変重要なものと考えており、自分(ケニヤッタ大統領)からも累次述べているとおり、我々としてもユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進していきたいと考えています。それ故に我々は、国家病院保険基金(National Hospital Insurance Fund(NHIF))により多くの人々が加入することを求めており、日本はこれに対する支援を約束してくれました(原文のまま)。
更に「ブルー・エコノミー(当館注:海洋資源を利用した経済)」を推進する上で日本と如何なる協力が可能かについても協議しました。(ナイロビで開催された国家海洋会議において)数週間前に申し上げたとおり、ケニアの領海域(原文のまま)は、陸上領土の4分の3の広さに匹敵するものです。日本は海洋資源の利用について大きく前進しており、海洋資源分野において日本がケニアに対する投資や資源探鉱を強化することを歓迎します。海洋に存在する経済権益としては、漁業や海底資源探索などが挙げられ、本件についても踏み込んだ議論を行いました。
日本はケニアのエネルギー開発分野での支援も行っています。日・ケニア間では、既存のオルカリア地熱発電開発協力を更に強化し、70MWを追加で発電すべく協力を進めています。また、官民連携の下、280MWの新たな地熱発電所を作るため、共同して取り組んでいます(原文のまま)(当館注:現在ある計画ではオルカリアV・140MWを円借款で、オルカリアVI・140MWをIPP(官民連携)で開発予定)。現在、モンバサ港のバース20の開発も進めており、これに加えて、バース21及び22を如何に早く完成させられるか協議を進めています(原文のまま)(当館注:現在整備中のバースは20及び21(モンバサ港開発計画)であり、ケニヤッタ大統領はバース22(フェーズ2)及び23(フェーズ3(予定))の早期完成を希望して発言したものと考えられます)。モンバサ港を東アフリカ地域及び中部アフリカ地域にとっての主要な海運港とするためモンバサ港開発を可能な限り迅速に進めることが重要と考えます。このようにモンバサ港開発についても日本側と突っ込んだ意見交換をしました。上記に述べた分野に加え、日・ケニア・ビジネス・フォーラムで取り上げた農業、製造業、石油・天然ガス及びパイプライン等に対する投資の必要性について議論することも今次訪日の主要な目的の一つでした。また、上記に掲げた分野について、JICAを始め日本の民間セクターの人々とどのように協力できるか意見交換を行いました。
(記者)
多くの日本企業がケニアへ投資し、ビジネスを拡大することを望んでいます。他方、安全面での懸念もあり、特にアル・シャバーブ(AS)の問題もあります。ケニヤッタ大統領は治安の問題に対し、どのように対処することをお考えですか。
(ケニヤッタ大統領)
これは我々が説明に努めてきていることです。ASの脅威にさらされていることは事実であり、脅威があることは否定しません。この脅威はケニアが置かれている地政学的な影響により生み出されたものです。我々はこれまでもこの問題に対しどう対処すべきかについて説明に努めてきました。第一に我々は、安全対策を強化しています。このことは日本の投資家の皆様も既に承知のことかと思います。
更に、ケニア政府は、テロとの戦いに勝利するためには、国際社会が一丸となって対応する必要性を主張してきました。なぜならテロの脅威にさらされているのは、何もケニアに限られた話ではないからです。ナイジェリア、リビア、シリアに加えて、フランスでもテロが発生しました。それに故に我々は、国際社会と一致団結し、テロを根絶するために協力する必要があります。これが自分(ケニヤッタ大統領)がケニア国民に向かって、伝え続けているメッセージであり、我々はどのような方法によってテロの脅威を根絶できるか模索するため、協力を深めていく必要があります。ケニア政府は、政府が果たすべき責任を果たし続けていきます。事実、これまでに我々はテロ攻撃を未然に防止してきています。マンデラ郡における例のようにテロリストがテロ攻撃に成功することもありますが、我々はケニア及びケニア国民の安全を確保するためあらゆる手段を取っています。ケニア政府は、テロ攻撃を未然に阻止するため安全対策に係る予算を増加させ、監視活動及び諜報活動を強化しています。テロの攻撃がケニアのみに限定された問題でないことは、日本の皆様も承知のことと思います。テロの問題は、世界中の人々を狙った国際的な現象です。我々は、人々が安全な環境でビジネスに従事するためにも国際社会が有する資源を共有する必要があります。
(記者)
ケニアは2030年までに中所得国になることを目指していますが、どのようにしてこの目標を達成するお考えですか。
(ケニヤッタ大統領)
我々は、2030年までに中所得国になる目標の実現のため、正しい方策を取ってきていると考えます。同目標を実現する上で最も重要なことは、何よりもインフラ開発に焦点を当てることと言えます。ビジネスをする上で必要な環境を整備すること、必要なエネルギーが確保されていること、質の高い人材が揃っていること、また大多数の国家人口をこのプロセスに巻き込んで行くことが極めて重要です。それ故に我々は、教育及び学校への電力供給を重視してきました。また、電力を学校に供給することは、学校のみならず周辺地域に電力を供給することにも繋がります。こうすることにより、より多くの人々を開発プロセスに巻き込んでいくことができます。こうした事情もあり、我々は道路開発にも力を入れてきました。インフラを整備することにより、農家の人々が市場に農産物を運ぶプロセスが簡素化されます。また、流通プロセスが改善されることは、自国製品の競争力をより向上させることにも繋がります。
これと同じ文脈において、全てのケニア国民が医療を受けられるようにするため、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを重視してきました。さらに、安定的かつ購入可能なエネルギーの供給を実現するため、エネルギー・セクター開発を重視してきました。スラム地域の再開発も同様の観点から重要であり、ナイロビは裕福な一部の人々のためのものではなく、全ての人がナイロビに帰属するとの意識を持てるようにしなければなりません。換言するならば、社会の底辺にいる人々が安定した生活を送れるレベルまで生活水準を引き上げることが出来なければ、社会が成長することはありません。
上記に掲げた事項が無用な政治抗争に妨害されずに実施されるのであれば、2030年までにケニアは中所得国になることができると強く確信しています。そしてこれこそが、自分(ケニヤッタ大統領)が率いるケニア政府の主要な課題だと認識しています。
こうした理由もあり、我々はこれまで汚職の問題に対処しなければいけないと述べてきました。汚職は我々の足を引っ張る問題です。汚職は、予算を生産的な目的に使う上での障害となります。そして、こうした汚職に関与する人々に対して、我々がどういった対応を取るか、多くの人々がまもなく目にすることになるでしょう。腐敗及び空虚な政治的発言こそが、ケニアが速やかに中所得国になる上での最大の障害です。
(記者)
日本、AU及びケニアは、次回TICADを2016年にアフリカで開催することを述べていますが、大規模な会議をケニアで開催することは可能ですか。
(ケニヤッタ大統領)
自分(ケニヤッタ大統領)は、ケニアには大規模会議を開催する能力があると考えています。ケニアは十分な能力と施設を兼ね備えています。我々が今必要なのは、他のアフリカ諸国の理解を取り付けることのみです。次回TICADをケニアで開催することについて、他のアフリカ諸国の支持を得られるのであれば、これは本当に素晴らしいことです。ケニアで次回TICADを開催することができれば、ケニアのみならずアフリカの潜在的可能性を日本国民、日本のビジネス界、日本の産業界及び日本からの観光客の皆様に見せることが出来ると思います。それ故にアフリカ大陸で初めて開催されるTICADをケニアで開催することについて、AU及びアフリカ諸国から必要な支持を取り付けられるよう願っています。
(記者)
現在、日本が大幅な黒字である貿易収支を均衡させるためケニア政府としてどういったことができますか。
(ケニヤッタ大統領)
この点に関連して、日本とケニアを繋ぐ直行便の必要性について取り上げてきました。直行便が開設されれば、日本からケニアを訪問する観光客の数も飛躍的に伸びることが予想されます。また、現在日本で人気が出ている切花などの商品の流通を改善することにも繋がります。さらには、ケニアから日本に輸出している工芸品、ナッツ及び花の輸出が促進されます。
我々は、ケニアで物資を生産するために日本からの投資を増加させることも重要と考えています。これを通じて、現在日本が大幅な黒字である貿易収支の均衡化も相当促進されると考えます。我々は、貿易収支の均衡化を図るため様々な取組をしています。
(記者)
第3回国連防災世界会議に出席したことを踏まえ、ケニアは日本の災害に対する経験のどういった部分を学ぶことができますか。
(ケニヤッタ大統領)
一つ目は早期警戒システムです。二つ目は、政府関係機関の連携による一貫性のある対応であり、三つ目としては、災害に対する訓練のレベルの高さが挙げられます。我々が最も驚いたのは、幼稚園児ですら警報と共に行動する訓練を常時実施していることです。彼らは最初に高台に行かなければならないことをしっかり把握しています。
訓練、教育、統一された指揮系統からケニアは学ぶことがあると考えます。早期警戒システムをケニアで採用することで、頻繁に起こる災害に対しより良い対処が可能となると考えます。今次会議を通じて、全ての国々が気候変動の影響を受けていることを感じました。我々は「もし災害が起きたならば」という対応よりも、「災害が起きた時は」といった形で問い掛けをしなければなりません。よって、今しなければならない議論は、「災害が起きた時にどの程度対策が講じられているか」という点です。なぜなら、「もし起きたならば」という問題ではないからです。我々は、特定の災害に対してどの程度の備えがあるか検証しなければなりません。