大使ご挨拶

コリール・シンゴエイ外務担当次官、ザイナブ・バングーラ国連ナイロビ本部事務局長閣下、各省長官、次官の皆様、上下両院議員の皆様、各国大使並びにご列席の皆様、
本日は徳仁天皇陛下の誕生日祝福のためお集まりいただきありがとうございます。この晴れの場にご列席ただいた皆様に歓迎の意を表します。今月23日をもって陛下は66歳になられます。ムダヴァディ内閣筆頭長官は65歳になられましたし、ケニア共和国は今年62歳、私もこの4月で62歳になります。毎年のことですが、私たち皆が一緒に歩んでいることを実感できるこの時はかけがえのない時間です。私たちが揃って一つの場所で陛下の誕生日を祝うことは、二国間関係にとり深い意義があると思います。改めてご列席ありがとうございます。
2010年に遡りますが、陛下は当時皇太子殿下として、初のサブサハラ訪問の際ケニアを訪れました。先日その際の公式晩餐会での陛下のスピーチの模様をビデオで見たところ、陛下はスワヒリ語で「ハムジャンボ(お元気ですか)?」、「ハバリ・ガニ(調子はいかがですか)?」と聴衆にご挨拶されていました。有名なスワヒリ語の格言「山と山が出会うことはないが、人と人は必ず出会う」もスワヒリ語でお話になっていました。またこの訪問の際、陛下はアフリカ大陸の形をしたジグゾーパスルをお買い求めになりました。それぞれのピースがアフリカ各国の形をしたものです。陛下はそれを最愛のお嬢様、愛子内親王へのお土産として買われたのです。愛子さまは16年にわたりこのパズルで遊びながらお育ちになりました。時には学校の試験にあたりアフリカの地理を復習するためにもこのパズルを使われたとお聞きします。愛子内親王は、このようにして陛下とともにアフリカへの親愛の気持ちを育まれてきたのです。
ご列席の皆様、
昨年は我々の関係にとり画期的な年でした。まず8月のルト大統領訪日により、日本とケニアは3年連続の首脳相互訪問を実現しました。ムダヴァディ内閣筆頭長官も2年連続で訪日をされました。これらが両国関係を強力に推進しました。TICAD9におけるケニアの代表は大統領とムダヴァディ内閣筆頭長官にドゥアレ保健長官、ミアノ観光・野生動物長官を加えた強力なチームで、このケニアチームがTICADの議論をリードしました。
第二に、12月にアサヒグループホールディングスが、23億米ドルの投資により東アフリカ醸造所(EABL)所有権の65%を取得したことを発表しました。日本企業による東アフリカ投資として過去最大、耳を聾する規模の投資です。年末の大ニュースでしたが、日本企業がケニアとアフリカの市場に対し、いかに大きな重要性と熱意を寄せているかを示す代表事例となりました。
本日、私は同様に熱意溢れる日本企業に、この場で製品とサービスの展示をしていただくよう依頼しました。アサヒ・インテックはカテーテルをはじめとする循環器手術関連製品を生産し、エルドレット病院では循環器医療のハートセンターを運営しています。総合商社双日がケニア市場で高い熱意を持って展開する商品の一つが、インスタント・ヌードルの「ナラ」です。ケニア全国のスーパーマーケットどこでも買えます。ピジョンは、乳幼児製品の専門メーカーで、哺乳瓶などを供給しています。メゾンは鬘メーカーですが、日本の化学製品会社カネカの合成毛髪を専ら材料とした鬘を生産しています。どの製品も変わりゆくケニア社会の変わりゆく消費者需要を捉えるものです。つまり、ケニア社会はますます忙しくなり、ますますファッショナブルになり、ますます乳幼児の発育に注意を払い、ますます心臓病への不安を抱えるようになってきているということです。このようにして4つの商品は、日本企業がいかにケニア市場に密着した注意を払って来ているかを示すものです。後ほど各ブースを回って、それぞれの商品を触り、試し、感じていただきたいと思います。
第三に、昨年は大阪・関西万博の年でした。キニャンジュイ産業・貿易・投資長官には6月のケニア・ナショナル・デーに参加いただきました。ナショナル・デーはケニア文化の力強さで見る人を圧倒しました。万博のケニア館を訪れた人数は、4月から10月の総計で230万人だったとのことです。これだけの大人数の日本人がケニアの文物に接したということです。
9月には、東京世界陸上選手権大会でケニア選手が大活躍しました。ムヴリャ青年・スポーツ長官の観覧の下、ケニア選手は11のメダルを獲得し、3つの大会新記録を打ち立てました。ベアトリーチェ・チェベット、フィース・キプイェゴン、リリアン・オディラといった選手の名前が日本人の人口に膾炙しました。
同じく9月、向山恵理子さん、またの名をアニャンゴさんが奏でる爽快なニャティティの音を私たちは耳にしました。向山さんは日本人女性であるにもかかわらず、これまでルオ族男性のみに演奏が許されていたニャティティの名人の域に達しました。向山さんは自伝「アニャンゴ・ニヤル・シアイヤ(ニャティティの女王)」の出版を記念して、アリアンス・フランセーズでニャティティの実演を披露したのです。これらを総合して思うに、昨年日本とケニアの間で文化とスポーツに対する関心と理解が双方向で劇的広がり、深まりました。
私たちは、今や両国関係が質的に異なる段階に達したと認識する必要があります。本年、私たちはこの素晴らしい現状を基礎に、強みから強みへとさらに発展させるべきです。日本国民は、日ケニア両国関係のダイナミックな前進は成長する日アフリカ関係にシンボルであると感じています。皆様と緊密に協力することを大いに楽しみにしています。
ご列席の皆様、
ムダヴァディ内閣筆頭長官は「イースト・アフリカン」紙に寄稿された新年の論文で、ケニア外交の4つの原則である、法の支配に基づくリベラルな国際秩序、平和と安定、多国間主義、汎アフリカ主義を強調されました。まさにケニアはこの4つの原則を奉ずる東アフリカの錨であり、それは日本が同じ4つの原則を奉ずる東アジアの錨であるのと同様です。私たち二人の前は、自由で開放的なインド太平洋を一層進めるための多くの仕事が控えています。
同じ論文で、東アジア共同体の市場統合をさらに進める重要性も指摘されました。私はムダバディ長官に全面的に同意するものです。この目的のためにケニア政府と力を合わせていくことも是非行いたいと願っております。
ご列席の皆様、
日本政府ナイロビ国際機関代表部常駐代表として、多国間主義に再度言及することをお許しください。昨年、私たちは国連ハビタット総会とUNEA7を国連ナイロビ本部で成功裡に執り行うことが出来ました。多国間外交が脆弱化している昨今の状況を踏まえれば、両会合の結果は賞賛に値すると考えます。私たちはこの結果を実施すべき段階にあります。日本は他の加盟国と力を合わせて実施する用意があります。これは日本が多国間主義の強化に引き続きコミットしていることを示すものとなるでしょう。多国間主義の再強化は、ここナイロビで始める必要があります。
昨年後半、私はナイロビにおけるアジア太平洋グループの議長を務めました。この間、メンバー国とバングーラ国連ナイロビ本部事務局長の支援をいただいたことに感謝します。本年、私はアジア太平洋グループの現在の議長であるインドネシアのウィチャック大使とその後任議長をお支えします。
ご列席の皆様、
最後に、両国関係の原点に立ち戻りたいと思います。日本の願いはいつも単純です。日本は、ケニアに自分の運命を自信を持って切り拓ける強靱な国になって欲しいと考えます。日本も自分の運命を切り拓ける強靱な国でありたいと日夜努力しています。日本は、それをケニアと一緒に、互いに学び合いながらやりたいのです。なぜなら、私たち日本人は、ケニア人には私たちと共通する多くの性質があると感じるからです。日本人もケニア人も、楽観的で、新しいものに対し進取の精神で取り組み、伝統を重んじ、勤勉に働き、そして自らを恃む強い気持ちを持っています。この単純な信念において、日本は変わらず一貫しています。日本は手のひらを返すようなまねをしません。日本はアフリカを覇権争いの舞台と見たりしません。日本はいつも、ケニアとケニア人からこういう存在として信頼されたいと謹んで念じています。これが私たちの長い友情の基礎であり、これからもそうあり続けます。我々両国の相互信頼を引き続き一緒に築いていきましょう。
2026年2月10日
特命全権大使
松浦 博司