大使ご挨拶

2025大阪・関西万博開幕から5ヶ月、いよいよ盛況度を増しています。世界158カ国が出展する万博に1日13万人の入場者が足を運んでいます。日本人が、国際社会に触れることの重要性とそれがもたらす豊かさを改めて集団的に体験しているのだと思います。万博ケニア展の入場者は1日1万3千人とのことです。実に万博入場者の1割がケニア展を通じてケニアの文物への親しみを深めています。
6月24日にはケニア・ナショナル・デーがありました。キニャンジュイ投資・貿易・産業長官の臨席の下、1千人近い日本人が式典に参加しました。これだけの数の日本人が、同じ時間、同じ空間を共有し、その中でケニア文化の持つパワーに圧倒される経験をしたことはかつてあったでしょうか。今後の日ケニア相互理解増進にとり、画期的な出来事であったと思います。同じく重要なことは、キニャンジュイ長官が訪日と万博参加を通じて、今後の日本との産業・投資関係につき明確なアイディアを持ってケニアに帰国したことです。同長官と協力して、一層産業・投資を進めていきたいと考えます。
そして今から一月後にはTICAD9があります。国際政治は激動の度合いを深めていますが、アフリカ諸国も他地域同様、あるいはそれ以上にこの激動に揉まれています。アフリカがこのような激動の衝撃を吸収し、それに翻弄されることなく運命を切り拓けるようになって欲しいと願います。どのようにしてそのような耐性(強靱性)をアフリカが養うことができるのか、そのために日本はどのように役に立てるのかをよく議論して欲しいと思います。また、そうはいってもアフリカの持つ脆弱性が一朝一夕に消えるわけではありません。国連をはじめとする多国間国際制度・国際機関は、アフリカの脆弱性に対するセーフティーネットを提供してきました。危機にさらされている多国間国際制度・国際機関を救い出し、セーフティーネット機能を今後も果たすことができるようにする必要があります。日本とアフリカがそのためにどのように協力できるかも議論して欲しいと思います。
ケニアにはアフリカ主要国の一つであり、TICADにおける主要パートナーですから、当然議論における主要な役割を担うことが期待されます。そのためルト大統領自身による参加が実現することを切に願っています。
TICAD9の機会に日ケニア二国間関係も一層強化したいものです。産業・インフラ分野、農業分野、貿易分野のそれぞれで、何が可能か両国で検討を進めています。安全保障分野では、防衛協力を中心とする伝統的な安全保障協力を超えて、気候変動の影響にさらされる国土の安全保障など多様な協力のあり方を追求したいと考えています。長年の友情に裏付けられ、ビジネス投資関係が日々拡大しているケニア、「自由で開かれたインド太平洋」を推進する重要なパートナーであるケニア、そのようなケニアとの間ならではの思い切った関係強化を図れるのに越したことはありません。またこうした協力が、上に述べたTICAD9における、アフリカの耐性(強靱性)強化や多国間国際制度・国際機関のセーフティーネット機能強化の一環となることも目指したいと思います。すなわち、ケニアの耐性(強靱性)を高めることをアフリカの耐性(強靱性)の有機的な一部としていくこと、またケニアとの協力を多国間国際制度・国際機関の提供するセーフティーネット機能と組み合わせることにより多国間国際制度・国際機関の再強化にもつなげることです。
あと一月間でどこまで進めるか。この追い込みの時期、これまで以上に皆さまによるご協力を頼りにしながら進めるところまで進んでいきたいと思います。倍旧のご支援をどうぞよろしくお願いします。
2025年7月18日
特命全権大使
松浦 博司